UPFが主導する「シンクタンク2022」と米日刊紙ワシントン・タイムズなどが共同主催した「普遍的人権と信教の自由のための希望前進カンファレンス」が11月12日に韓国で開催されました。会議では、「私たちは世界中のすべての人々に、世界の宗教の信者に対するあらゆる形態の不寛容、偏見、中傷、憎悪に断固として反対するよう呼びかける」との声明文が発表されました。

シンクタンク2022のユン・ヨンホ運営委員長は、「私たちが人権について語るとき、その最も基本的な権利が『信教の自由』である」と述べ、1948年に国連総会で採択された世界人権宣言第18条に謳われる同権利の重要性について指摘しました。

ワシントン・タイムズのトーマス・マクデビッド会長は、多くの国で宗教団体や信仰をもつ個人が迫害、不寛容、差別、暴力に直面している現状について触れ、「私たちは団結し、真実を直視し、信教の自由の普遍的価値に関する宣言に示されている原則に基づいて、勇気を持って前進しなければならない重要な時に立ち会っている」と強調しました。

その後、各国の信教の自由と人権の状況について事情に詳しい専門家が登壇。それぞれ、イスラム系ウイグル人、チベット仏教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒、アフマディ教徒、バハイ教徒、エホバの証人、ヤジディ教徒、法輪功、そして最近では日本における世界平和統一家庭連合などの宗教団体への迫害の状況などが報告されました。


国際「信教の自由」担当特命大使を務めた元米国上院議員のサム・ブラウンバック氏(=写真左)は、中国共産党が「すべての信仰と戦争している」と指摘。これに対し、信教の自由は「民主主義における開かれた社会の特長」であるとし、「民主主義国のすべての人はいつでも、どこであっても信教の自由のために立ち向かわなければならない」と述べました。

欧州連合(EU)の「信教の自由」促進に関する第一特使(2016~2019年)のヤン・フィゲル氏(=写真右)は、宗教に対する迫害や中傷・差別などの「悪」がなぜ今の世の中でこれほどまでに影響力をもっているのかについて、人々の間に無関心、無知、恐怖の3つの要素が広まっているためと指摘。フィゲル氏はこの3つを克服するために、関心を高めるための積極的な取り組み、知識を広げるための生涯教育、そして市民が勇気を持って行動できるような環境づくりに注力しなければならないと指摘しました。

また複数の講演者が、日本で安倍晋三元首相の銃撃事件以来激化している、家庭連合への攻撃について取り上げました。仏パリに本拠を置く国連NGO・CAP-LCは、日本の国家的悲劇が「暗殺者とされる者を被害者とする奇妙な物語に仕立て上げられている」として、ジュネーブの国連人権委員会に正式に提訴しています。


イタリアの宗教学者で、新宗教研究センター創設者であるマッシモ・イントロヴィニエ氏(=写真右)は日本の状況について、「平和的な宗教運動を差別し迫害するために、『カルト』という言葉を使うことが今や耐えがたいレベルに達しており、止めるべきである」と力説しました。

そして、「マルクスは宗教を『人民のアヘン』と呼び、フロイトは『心理的問題の妄想的産物』、さらにニーチェは『国家が市民教育を失敗したために存在するもの』と主張した」と述べ、「共産主義に批判を投げかけた家庭連合とフロイト精神分析学を批判したサイエントロジー、ニーチェ理想と相反するエホバの証人が強力な宗教ではなく『悪い宗教の象徴』として憎悪と迫害を受けた」と指摘しました。


ニュート・ギングリッチ元米国下院議長(=写真左)は、家庭連合を批判するメディアや反対勢力の多くが「共産主義や社会主義、反宗教、反米、そして反安倍の視点と政治的に同調している」と指摘。その上で、「私が懸念しているのは、こうした差別を助長する人々が中国と北朝鮮の脅威に直面する日本の国力を弱め、実際に日本の安全保障と平和を弱体化させようとしているという点だ」と強調しました。

そして、亡くなった安倍晋三元首相について、「世界中が安倍首相という一人の偉大な世界的指導者の業績を称え、別れを惜しんでいる。日本は米国と自由世界の偉大な同盟国であり、非常に栄誉ある国。日本が安全保障、平和、経済的繁栄のために世界のリーダーとしての地位を占めるに至ったのは、崇高な原則を採用した日本人の奥深い国民性によるものだ。日本が今後も『信教の自由』と『民主主義』に対するコミットメントを守ることを信じている」と訴えました。


ダグ・バンドウ米CATO研究所先任研究員(=写真右)は「信教の自由は有名な『炭鉱のカナリア』(※)のようなものであり、それが侵害されるということは、他の自由に危険が迫っていることを私たちに警告しているにほかならない」と述べました。

続いて、迫害されているキリスト教徒を支援する超教派団体「オープン・ドアーズ」の取り組みについて語ったバンドウ氏は、同団体がアフガニスタンのタリバンや北朝鮮の政権を始めとした、キリスト教徒や他の信仰を迫害する上位50人をリストアップしていることを紹介。「宗教の自由が損なわれると、言論や討論、選挙の自由が否定され、テロや大量虐殺などの恐ろしい紛争を生み出す」と指摘しました。


コール・ダーラム米ブリガムヤング大学教授(法・宗教学国際センター創設者)(=写真左)は、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の指導者と会員が数十年にわたる迫害、残忍な拒絶、そして虐殺にいかに耐え抜いたかを振り返りました。ダーラム氏はモルモン教が今日、キリスト教の主要な教派の一つとなり、その信徒は広く受け入れられていることに言及し、「迫害の中で立ち上がることは、ある種の強さを築き、それ自体が報いを受けることになる」と述べました。さらに迫害を生き延びることで、「信教の自由の実際的な重要性に対する認識が強まり、他者の苦しみに対する共感が得られる」とまとめました。

※鉱山のカナリア〜危険が迫っていることを知らせてくれる前兆。かつて石炭鉱山ではカナリアを入れた鳥かごを坑道の有毒ガスの検知に使っていたことからきた慣用句。