イスラエル、アラブ首長国連邦、米国間で昨年合意がなされた「アブラハム合意」(※)に関するUPFウェビナーシリーズの第1回目が1月14日、世界の著名な指導者をパネリストに迎えて開催されました。同ウェビナーは、UPFのプロジェクトである世界平和頂上連合(ISCP)が、UPFインターナショナル、北米、欧州・中東の各UPFリージョンの協力を得て企画したものです。

「中東和平への一歩」と題されたウェビナーでは、カナダのスティーブン・ハーパー元首相(2006年〜2015年)、イスラエルのエフード・バラク元首相(1999年〜2001年)、チェコのミレク・トポラーネク首相(2006年〜2009年)、ニュート・ギングリッチ米元下院議長(1995年〜1999年)らがそれぞれプレゼンテーションを行い、オンライン視聴者からの質問に答えました。

最初にUPFイスラエル会長のヌリット・ヒルシュフェルド博士が中東和平のためのUPFのビジョンの概要を説明。続いて、UPFインターナショナルのトーマス・ウォルシュ議長が開会のあいさつを行いました。

米ワシントン・タイムズ紙の国際安全保障チームを率いるガイ・テイラー氏は、アブラハム合意の背景について述べました。

テイラー氏は、アブラハム合意を「1993年のオスロ合意以来、アラブ・イスラエル関係に関連する最も重要な進展」と評しました。一方で、▽アラブ諸国が米国のパレスチナ承認なしに合意した▽サウジアラビアの参加が見通せていない▽次期米政権がイランとの関係改善の意向を表明していることで、サウジアラビアの参加が妨げられるのでは――といった懸念も示しました。

バラク元イスラエル首相は、自身が現在のイスラエルの指導者と同じ政治的視点を共有しているわけではないと断った上で、合意はイスラエルとパレスチナ人との氷を砕くことにつながるだろうと希望を述べました。

トポラーネク元チェコ首相は、「イスラエルとアラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコの間の関係正常化の合意と、スーダンとの同様の合意の約束は画期的であり、歴史的にも重要であり、永続的なものである」と述べ、ヨーロッパの視点を示しました。

ギングリッチ元米下院議長は、「アブラハム協定で重要なのは、『我々は歴史的に共に歩みを進めてきた』という事実。合意は『私たちは部族の兄弟関係だ。互いに殺し合うよりも、一緒に生きる方法を見つける方がはるかに理にかなっている』と謳っている」と述べました。その上で、ギングリッチ氏は、今回の合意が「平和の追求に向けた歴史的で偉大な血統に関わるプロセスに組み込むための真の努力を表している」と述べました。

聴衆から活発な質問が飛び交い、貴重な示唆を得た後、各演説者は締めくくりの挨拶を行った。

ハーパー元カナダ首相は、合意の成功について、①米国の論争の的となった大使館のエルサレムへの移動②それによって正面からイスラエルの存在をサポートするとともに、イランに対する明確なスタンスを示した③イスラエルと湾岸の利益を団結させた――などを要因にあげました。

UPFでは今後も、アブラハム合意に参加している他の国々の代表者を招いて、地域の永続的な平和を確保するための建設的な対話を続ける予定です。

※アプラハム合意〜2020年8月15日、イスラエル・アラブ首長国連邦(UAE)間で成立した和平合意で、国交正常化を含んでいる。9月15日には、米ワシントンでイスラエル・UAE・バーレーン3カ国間の和平合意に関する共同声明(The Abraham Accords Declaration)が出された。1979年のエジプト、94年のヨルダンに続き、イスラエルと正式な外交関係にあるアラブ諸国はこれで4カ国に。名称の由来は、ユダヤ教、キリスト教、イスラームの3宗教の共通の祖先アブラハムにある。