UPF主催のピースサミット2023は5月3日、アジア太平洋地域をテーマとした分科会セッション3Aを行いました。同地域から参加した各界リーダーを中心に世界の平和秩序に対する現代の課題と平和文化の醸成について議論が行われました。

フィリピン下院上級副議長で前同国大統領のグロリア・マカパガル・アロヨ氏(=写真左)がビデオメッセージを寄せました。アロヨ氏は1950年当時、国家間の紛争を回避し平和を維持するには西洋的な道しかなかったが、今ではアジアと西洋の2つの対照的なアプローチがあるという自身の考えを述べました。これについて同氏は、「欧米流とは、冷戦時代のパワーバランスに立脚した考え方であり、これによって欧州は世界の中で最も軍事的な力を競い合う地域となった。これに対し、アジアの道は経済・外交関係を拡大し、紛争を対話と合意形成で静かに処理するものである」と説明しました。

次に、キルギス元首相のマトゥブライモフ・アルマンベト氏(=写真右)がスピーチしました。アルマンベト氏は冒頭、中央アジアが国際社会にとってますます重要になってきていることを説明しました。同地域は6つの国からなり、古代から地域に人が住みつき、多様な民族と文化によって東アジアとヨーロッパを結ぶ架け橋となっている一方、現代はさまざまな変化が起きていると指摘しました。同氏は、政情不安、医療や教育などの問題を上げる一方、これらの問題はグローバルなコミュニティで協力し合えば、克服することができると強調。その過程で、国民を結びつける平和の文化を育む必要があり、人権と各民族・文化を互いに尊重しなければならないと述べました。

最後に、スリランカ国会副議長のアジス・ニシャンタ・ラジャパクセ氏が講演(国会議長調整秘書のチャメーラ・ヤパ・アベイワルダナ氏が代読)(=写真右)。ラジャパクセ副議長は主に3つの分野について語りました。

第1に、インド太平洋地域と世界的な大国間競争。同氏は、人工知能(AI)のような最先端の分野における技術の進歩は、戦争を前例のないパラダイムへと導き、特定の技術の進歩が人類にもたらす危険性を証明していると指摘しました。AIを駆使した無人機、極超音速技術、最先端兵器の使用と開発を目の当たりにし、世界は次に何が起こるか警戒していると述べました。

第2に、コロナパンデミック後の地域および世界経済の課題について。世界の富は拡大を続けているが、富の公平な分配や持続可能性など、他の指標の動きには大きな懸念があると指摘。金融大手クレディ・スイスの「グローバル・ウェルス・レポート」では、上位1%の世帯が世界の富の43%以上を所有していると計算していることを紹介しました。

第3は気候変動について。アジア太平洋地域はもとより、世界中で多くの国が気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇などの環境問題に直面していることに言及し、これらが世界平和の大きな阻害要因となっていると分析しました。