UPFが主導するシンクタンク2022と、世界日報、ワシントンタイムズなどが主催した第6回シンクタンク2022フォーラムが5月4日、韓国・ソウルのロッテホテルワールドで「ピースサミット2023」の一環として開催されました。出席した各国の専門家はいずれも、米中の覇権争いやロシア・ウクライナ戦争などで深刻化する世界的な新冷戦の下、東アジアを舞台に形成される新冷戦秩序の渦中にいる韓国がより主体的な戦略を策定しなければならないと強調しました。
ユン・ヨンホピースサミット組織委員長のあいさつのあと、コアルビン・クルティ・コソボ首相が、今日世界を覆っている2つのトレンドについて話しました。
その1つは自由、平和、民主主義、もう一方は侵略、戦争、独裁主義であるとし、これらの傾向は、世界中で顕在化していると分析。「ウクライナへのいわれのない侵略は、世界で最も成長著しい地域の一つである太平洋地域に大きな影響を及ぼしている。それは、北朝鮮のミサイル発射の危険性の高まりや、中国の台湾に対する攻撃的な姿勢に表れている」と指摘しました。
続いて元米ハドソン研究所中国戦略センター所長マイケル・ピルズベリー・ヘリテージ財団上級研究員(=写真右)が基調講演をしました。ピルズベリー氏は「中国の圧力に対する米政府の弱腰対応は、長い年月が経った後も深く根付いている」とし、中国の表立った友好的なイメージをそのまま受け入れてはならないと指摘しました。 ピルズベリー氏はまた、「敵を知ることで戦略を立てることができる」とし、中国が作ろうとしている新しい世界秩序、中国式世界観に対する各国の指導者と世論を形成する人々に特別な警戒を求めました。中国は古い覇権を崩し、新しいグローバル王朝を誕生させた3000年の新興強国の歴史を持っていることを強調した上で、「中国は台湾を自分たちの一部だと主張しているが、台湾はどの国ともそうした関係を認める約束に署名したことはない」と述べ、「誰が台湾の所有権を主張できるのか」と、中国を批判しました。
ピルズベリー氏の基調講演に対し、韓国「国民の力」のキム・クンシク統一委員長(=写真右)は、地政学的条件などで中国との関係において韓国が直面している困難を説明しました。一方で、金氏は「今の韓半島(朝鮮半島)情勢は20年前とは違う。脱冷戦というよりは新冷戦時代」とし、「ユン・ソンニョル政権は過去の枠組みに囚われないという視点から、外交安全保障政策を再構築している」と紹介しました。
続いて、マイク・ポンペオ前米国務長官(=写真左)が登壇しました。ピルズベリー氏の基調講演と関連し、「トランプ政権でも、中国をどう理解するか、平和に対する中国の脅威をどう克服するか、多くの悩みを抱えていた」と述べ、ピルズベリー氏の見解に同意しました。ポンペオ氏は「米国と中国の覇権競争という言葉をよく聞くが、これは正確な表現ではない」とし、現在行われているのは国同士の戦いではなく、「世界が従うべきモデルに対する競争」という点を強調。中国の挑戦は人権、法の支配など普遍的な価値を守る問題、未来世代の「生き方」への挑戦と説明しました。また、ポンペオ氏は、気候変動、保健協力など今日の国際社会の危機にも中国が非協力的であることを挙げ、「(中国問題を解決する上で)韓国政府の役割が重要」という点を指摘しました。
パネルディスカッションでは、まず、ベナン元大統領のトマス・ヤイ・ボニ氏が「アジア太平洋地域には(平和を阻害する)“時限爆弾”を抱えており、これを解決する必要がある」と述べ、参加者らに対し、行動計画である「グローバルピースプラン」を策定するよう呼びかけました。
次に、ニュート・ギングリッチ米国元下院議長(=写真左)が発言。「私たちは美しい土地に住んでいると各自が信じている。美しい土地で自由に自分の人生を生きることは、独裁国家で生きるよりも好ましいことだ」と述べました。
欧州の視点からは、オーストリア元国防大臣のヴェルナー・ファスラベンド氏が発言。「北朝鮮を支援しているのは中国だけである。台湾にとって、2022年、2023年は極めて決定的な出来事だった。チェコ代表団、そしてナンシー・ペロシ氏の訪問により、中国と米国の戦争ゲームがエスカレートした」と説明。「歴史的に台湾は共産党政権下になかったが、中国は北朝鮮に影響を与えることができ、そのための実質的な根拠を持つ唯一の国」であるとし、中国に対し、武力で台湾と統一することは許されないと教える必要があると強調しました。