UPFスロバキアと「国際法・宗教研究センター」が共同主催したシンポジウム「攻撃される信教の自由」が12月9日、スロバキアの首都ブラチスラヴァの会場で開催されました。

開会にあたり、UPFスロバキアのミロス・クラス会長が歓迎のあいさつを述べました。

セッション1では「人間の尊厳の促進-人権への提言」をテーマに議論が行われました。

最初に欧州連合(EU)で「信教の自由」促進に関する特使を務めた(2016〜2019年)のヤン・フィゲル氏が発言。フィゲル氏は、「人権の侵害は、人間の尊厳を軽視することに根ざしており、両者は密接に結びついたもの。ヨーロッパの価値観の第一は人間の尊厳であると認識されている。信仰を持たない人は宗教の自由にほとんど関心がないが、尊厳は誰しも受け入れられるべきものであり、信仰を持つ人とそうでない人の間の架け橋となるべきもの」と述べました。

2番目の講演者であるマーク・ヒル教授(=写真左)は、主に英国やストラスブールの欧州議会で活動し、信教の自由に関する著名な擁護者です。ヒル教授は特に裁判の文脈において、人間の尊厳の重要性がより広く議論されるべきであると示唆。世界人権宣言がアフリカなどではヨーロッパの発明と見られていると述べた上で、「人間の尊厳はアフリカのコミュニティにとって、万人の尊重を最大化する手段としてより魅力的であり、それは多数の人にとって必要であることから、政治的なテーマ以上のものだ」と強調しました。

続いてセッション2「人権としての信教の自由は欧州で絶滅の危機に瀕しているのか?」が行われ、セッションの冒頭、米日刊紙ワシントン・タイムズが制作した日本の世界平和統一家庭連合への迫害の現状に関する映像が上映されました。

元国際連合工業開発機関(UNIDO)のプロジェクトマネージャーであるアフサル・ラトール氏は、自身のいくつかの人生経験を共有しました。 インドのカシミール地方で生まれたラトール氏は、1988年にアウシュビッツの強制収容所を訪れた際、父親から「息子よ、お前は幸運だ、一生こんなものを見ることはないだろう」 と言われたことを紹介。同氏は数年後、ボスニアで同様のキャンプを見たとし、 「『人権宣言 』が制定されて数十年経つのに、なぜいまだに人権について議論しているのだろう」と疑問に思ったと述べました。また、宗教が人々をより良くすると言われる一方で、しばしばそうでない現状があることについて指摘しました。

次にセッション3「信教の自由と人権の促進・保護に関するメディアの役割とは?」が行われました。

最初にイタリアの政治学者アントニオ・スタンゴ氏が登壇しました。スタンゴ氏は1980年代初頭から人権問題に取り組んできた学者です。

スタンゴ氏は「現在、信教の自由が攻撃を受けている。これが続けば、人権法制全体を解体しかねない」と警鐘を鳴らしました。その上で不公正なメディアに対し事実調査ツアーを企画することを提案。「迫害されている人々に直接会って話を聞くようジャーナリストを促さなければならない。国民の意識を高めるためにメディアが必要だ」と述べました。

続いて、IMAP(国際平和言論人協会)コーディネーターであるピーター・ゾーラ氏が登壇しました。ゾーラ氏はメディアは「信教の自由」を擁護すべきだが、そうしていない現状を例をあげながら説明。中国では共産党員よりも多い1億5千万人の地下キリスト教徒が暮らしており、チェコの司教たちが中国の地下キリスト教徒の人権擁護嘆願したにも関わらず、メディアからの支持はほとんど得られなかったことなどを紹介しました。

また、イスラム世界のメディアが中国におけるウイグル人の虐待と監禁について報道しないことや、シリアのキリスト教徒が大量に流出していることについてもほとんど報道されていないことにも触れ、メディアの責任を追及しなければならないと強調しました。

ジャック・マリオンUPF欧州共同会長は閉会のあいさつで、「共産主義者やヒューマニストが多数派でない国でも、国家に対して、宗教迫害という民主主義の伝統とはかけ離れた手段がまかり通っている」と述べ、日本の家庭連合信者への迫害が、民主主義社会の多くの規範に反していることを説明しました。

各セッション終了後には、会場での参加者だけでなくオンライン参加者も含めて質疑応答の時間が持たれました。