UPF欧州・中東は11月11日、バルカン半島地域の元首脳や大統領が集まる「ポドゴリカ・クラブ」と共催で、バルカン指導者会議を開催しました。「西バルカン諸国とEU関係 挑戦と展望」をテーマに行われた会議には17の大使館の代表者や学者、NGO関係者など約150人が参加しました。
最初に、ジャック・マリオンUPF欧州・中東共同議長やウィーンの外交アカデミーのエミール・ブリックス大使があいさつし、参加者に感謝の意を表しました。
続いて「EUとNATO ロシアのウクライナ侵攻を踏まえた欧州の安全保障体制と西バルカンの位置づけ」をテーマにセッションが行われました。
アルバニア元大統領でありISCPバルカン議長であるアルフレッド・モイシウ氏(=写真左)は、ロシアによるウクライナ侵略によって、脆弱なバルカン地域が不安定になっているとし、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボが注目されている一方で、モンテネグロの問題にも言及しました。また、「EU加盟国は、西バルカンの状況がいかに危険なものであるかを十分に理解していない」として、同地域の政治状況を鋭く指摘。まだ解決されていない歴史的な葛藤関係の解消のためには、必要な妥協や協力に至る前に地域の歴史を理解しあうことの重要性を挙げました。
クロアチアのスティエパン・メシッチ元大統領は、現在の紛争が東南ヨーロッパ諸国に大きな影響を与えていることに言及。 メシッチ氏は「経済状況が悪化すれば常に不安のレベルが高くなる」と指摘しました。影響はEU全体に及ぶもので、それは短期的ではなく、今後数年間続くだろうと述べました。さらに、西バルカン諸国の安定にはEUが特別な責任を負っていることを強調するとともに、アルバニア、北マケドニア、セルビアがめざす自由な移動を保障する自由経済圏がより安定した東南ヨーロッパの未来を示す道となるだろうと強調しました。
次のセッションでは「西バルカンとEU加盟プロセスの停滞 成果と責任体制、次なるステップ」をテーマに話し合われました。
アルバニアのレクシェプ・メイダニ元大統領は、西バルカンの安定には地域諸国がNATOとEUに加盟することが必要であると述べ、加盟プロセスの停滞は、西バルカンの民主主義を脅かすものであると指摘しました。メイダニ氏もメシッチ氏と同様、西バルカン6カ国が域内の市民の自由な移動を促進し、専門的・学術的な資格を相互承認することに合意したことを説明。このことは21地域の緊張を緩和し、加盟プロセスを簡素化する上で極めて重要であると結論づけました。
オーストリア出身の欧州議会議員、ルーカス・マンドル氏は、「EUにはリスクをとる覚悟のある勇気あるリーダーがいないため、多くの人がまだ眠っている」と述べました。マンドル氏はオーストリアの故エルハルト・ブセック元副首相が西バルカン諸国がEUに加盟するために交渉した功績を紹介し、西バルカンのEU加盟は欧州の安全保障と欧州の国際的な影響力のために不可欠である、と強調しました。今回の会議は、次世代に完全統合された欧州を提供するための行動を呼びかけるものであるとまとめました。
続いてセッション3が行われ、「西バルカンの平和安全保障 前進に向けた若者の力と可能性」をテーマに開催されました。
このセッションでは、指導者や重要な国家機関の腐敗、教育システムにおける大きな障害となっているポリティカル・コレクトネス、安全な国やコミュニティを作るための暴力や薬物乱用の防止など、社会経済や政治生活のさまざまな分野で活躍する次世代リーダーや活動家などの見解や視点が語られました。そして、若者が平和構築のプロセスに参加し、政府と密接に協力し、政治家が彼らの声に注意を払うことの重要性について議論が行われました。