UPF-USA主催ウェビナー「金正恩時代の北朝鮮経済」

UPF-USAは2021年12月21日、「金正恩時代の北朝鮮経済」をテーマにウェビナーを開催しました。朝鮮半島情勢に関する議論の多くは、核軍縮などの安全保障や地政学的な視点に関心が集中しますが、今回のウェビナーでは経済的な考察にフォーカスしました。新型コロナウイルスパンデミックの際の国境閉鎖は、北朝鮮経済に不確実性とインフレ圧力をもたらした一方で、変革を促す機会になる可能性があるとの意見が共有されました。

ウェビナーではまず、米「韓国経済研究所」の理事であり、ジョージ・ワシントン大学「韓国学研究所(GWIKS)北朝鮮経済フォーラム」議長でもあるウィリアム・ブラウン氏(=写真)が、自身の研究を紹介し、議論と考察を行いました。

ブラウン氏は、北朝鮮ウォン、米ドル、中国人民元が流通する一方、賃金や物価は国家管理と市場決定が混在する北朝鮮経済について、かつての中国のように世界経済との統合に向けた経済改革を行える状況にあるのか、との問いを投げかけました。

北朝鮮が貧しいのは資源がないからではなく、生産性が低いためと分析するブラウン氏は、配給制に代わってドルや人民元が広く流通し、ボトムアップで市場化が進んでいる北朝鮮経済について、「改革への希望がある」とする一方、それを支えるのはトップダウンの金融政策と改革ではないと指摘しました。

ブラウン氏は、北朝鮮が中国のような経済改革を実現するためには、①価格と賃金のシステム統一②ある程度の私有財産権の確立③農業の脱集団化④新しい貨幣と銀行システムを構築し、金利を利用して民間の貯蓄を促進し、最適な用途に投資を誘導(韓国モデルに倣う)⑤公務員の給料を上げる一方、巨大な官僚機構と軍隊の規模を縮小⑥主要工場などの重要な国有資産を民営化⑦税制と透明性のある予算を確立――などが必要と提言しました。

ブラウン氏の発表を受けて、グローバル・リソース・ネットワーク社マネージング・パートナーのアルバート・ショート氏(=写真)がコメントしました。ショート氏は、「経済的に大きな変化をもたらすことができるかどうかは、政治的な構造に注目しなければならない」とした上で、一党独裁で、70年以上にわたって3人の指導者しかいない北朝鮮が権威主義的な独裁国家であり、「これらのエリートは変化に興味がなく、彼らの特権を脅かすものは、歓迎されないかもしれない」と強調しました。

また、「中国が本当に北朝鮮に大きな経済的進歩を望んでいるのか」と疑問を呈し、その理由として、「北朝鮮の困窮状況が、韓国を介した日米の影響力の緩衝材として管理するという中国の利益に合致するからだ」と分析しました。

ショート氏に続き、元北朝鮮担当特使で国家核拡散防止センター所長のジョセフ・デトラニ氏がコメントしたほか、他のパネリストも参加し、経済改革の可能性や、経済制裁が北朝鮮の真の変化を促すのに有効かなどについて、活発な議論が交わされました。