今回のウクライナ危機に際して、UPFインターナショナルのトーマス・ウォルシュ議長は4月8日、米紙「ワシントン・タイムズ」にコメントを寄せました。以下に要約を紹介します。
岐路に立つ国連 最悪の事態を好機へ
ウクライナの状況は世界に衝撃を与え続けている。私たちは人々が命を奪われ、土地を追われ、街を破壊される未曽有の事態を目の当たりにしている。
また、この危機によって統合と分裂が同時に起こっている。一部の国家間では同盟関係が強化されている一方で、一部ではそれが弱体化している。西側諸国は、ロシア、中国、イラン、さらには北朝鮮を中心とする全く異質な同盟と対立しながら、ウクライナの背後に結集している。
「新冷戦」の世界は、競合する超大国の間で分裂を助長し、それぞれが国境線だけでなく、その先の友好的または中立的な隣人が暮らすより広い地域の権利を主張する。
このような状況において、ウクライナが新たな「凍結された紛争」(解決が棚上げにされた紛争地)の悲劇的象徴の1つとして終わることは十分に考えられる。朝鮮半島のような分断状況が世界的に拡大することは想像に難くない。より暗いシナリオは、ポスト冷戦の瞬間が第3次世界大戦に発展することである。
一方で、国連、特に国連安全保障理事会はこうした危機に対して、断固たる行動を取ることができず、限界を露呈しているように思われる。国連がその前身である国際連盟と同様の運命に辿っているのではないかと懸念する声も聞かれる。これは安全保障理事会の常任理事国が互いに不信感を抱いているからであり、合意が難しく、解決への取り組みを妨げる拒否権を持っているからだ。
いま必要なことは、主権と非侵略の原則を再確認し、非軍事化に向けた取り組みを行う新しい「グローバル・コンパクト」である。
(限界を指摘されつつも)なお国連はその先頭に立つことができ、またそうしなければならない。現在の地政学的危機は、少なくとも地球規模の気候変動危機と同じくらい深刻である。私たちは皆、過去5週間の限定的な戦争が、「持続可能な開発目標」を達成するための努力をいかに蝕んでいるかを目の当たりにしてきた。
国連は歴史的な転換点に立っている。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)を発展させ、2015年のパリ協定をもたらしたこの国際機関のリーダーシップは、紛争予防と世界秩序に関する条約を発展させるためのモデルとなる可能性がある。
このような条約は、締約国会議を形成することができる。その際、多様な統治形態や社会・経済システムの是非を論じる必要はない。むしろ、世界の人々と国家が協力して、来るべき世代のために恒久的な平和と相互尊重と世界的繁栄の世界を築くための方法にフォーカスすべきである。
アントニオ・グテーレス事務総長と国連総会は、現在の世界秩序の危機に対処するためのサミットを、おそらく2022年の総会に合わせて開催することができる。世界のため、国連のため、そして私たちの子供たちのために、今こそその時だ。※原文(UPFインターナショナルのウェブサイト)はこちら。
トーマス・ウォルシュ(UPFインターナショナル議長)