シンクタンク2022 IMAPセッション 韓国元統一部次官が基調講演

UPFなどが主催する「シンクタンク2022フォーラム」のIMAP(国際平和言論人協会)セッションが1月26日、開催されました。「DMZ(非武装地帯)平和公園構想の意義と南北統一に関する展望」をテーマに、日韓両国の専門家が発表と議論を行いました。

ウェビナーでは、朴槿恵(パク・クネ)前政権下の統一省で次官を務めた金炯錫(キム・ヒョンソク=写真上)氏が基調講演しました。

金氏は冒頭、北東アジア地域が相対的に緊密な経済協力と相互依存の関係を強めている一方で、政治と安保の分野においては葛藤関係が継続しているという、いわゆる「アジアンパラドックス」に言及。自身はこうした考えを「正しい」と断じるには時期尚早との認識を示し、アジア地域の成長と変化を過度に悲観すべきではないとの考えを明らかにしました。

朝鮮半島分断の象徴であるDMZの置かれた現状について、①韓国動乱(朝鮮戦争)と南北分断の記憶遺産を有している②歴史的トラウマを再生産する空間③不幸にも世界最高レベルの地雷埋設地域④絶滅危惧種の野生動物を含む希少種の動植物などが生息する世界的な自然生態保存地域――などと説明。

半島の平和構築に向け、DMZを平和構築の場として積極的に活用することで、「ベルリンの壁を抱えたかつての東西ドイツのように分断と統一を知らせる教育、観光の場へと変えていくことができる」と主張しました。具体案として、DMZに国連事務局を誘致することや地雷除去事業の推進、南北鉄道・道路の連結、教育・文化・観光中心の国際平和都市の建設、希少動植物を保護する自然生態公園の整備などを提案しました。

その上で、金氏はDMZ(DeMilitarized Zone=非武装地帯)を、朝鮮半島の平和の夢を実現する地域、「Dream Making Zone」に変えるというビジョンを訴えかけ、韓国と北朝鮮が国際社会とともに統一の夢を実現する舞台になればと述べて、UPFの取り組みに期待を寄せました。

日本からコメンテーターとして参加した、読売新聞元アメリカ総局長の山田寛・嘉悦大学元教授は、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の現状を分析しながら、「平和公園構想を今すぐ加速するのは困難」と指摘しました。一方で「南北統一への当事国の人々と国際社会の関心を高めるためには、DMZ平和公園構想のような夢とロマンを掲げ続けることも大事」と語りました。統一への具体的インフラ作りとして、「南北の若者、子供たちの文化・スポーツ交流を進めることは可能ではないか」と提案し、日本や米中も含めた関係国が共に協力する環境づくりの必要性を指摘しました。